2019年 鎮魂の夕べ 慰霊祭 館長挨拶
今年も戦後74年目の夏を迎えました。
74年前の8月のこの時期、旧満州でも多くの開拓団の人々が倒れ、また逃げ惑ってい
ました。「満蒙開拓」と言う名での国策により多くの日本人開拓団の人々が犠牲となり、
また同時に現地の人々等にも多大な犠牲を与えてしまった「満蒙開拓」の「被害」と「加
害」の歴史。その日中双方含め多くの犠牲者の鎮魂のためにと、今日、この猛暑の中をお
集まり頂きました多くの皆様方に改めて御礼を申し上げたいと思います。そして、皆様と
共に、旧満州の地で亡くなった全ての犠牲者の皆様に深い哀悼の思いを捧げたいと思いま
す。
満蒙開拓の史実に向き合い、明日の平和の教訓にするためにと、私どものこの記念館が
開館してから早いものでもう6年の歳月が経過いたしました。流石に来館者数も減少傾向
にはありますが、満蒙開拓の歴史を通じて次世代に平和の尊さを伝えていくと言うこの記
念館の担うべき役割の重さは開館した6年前も、そして今も何ら変わることはありません。
ぶれることなく、満蒙開拓の被害と加害の両面に向き合いつつ、明日の平和の構築に向け
ての「平和の種まき」をこれからも皆様と共に続けてまいりたいものと思います。
この満蒙開拓の歴史を通じて、次世代を担う若い皆さんにも平和の尊さを学ぶ場所とし
て活用していって頂くこと等の当館の使命を、施設的にも更に充実させるためにと昨年春
から新たに取り組んだ「セミナー棟」の増築も、多くの皆様方からの心強い、温かいご支
援、ご寄付を頂く中でこの4月には着工し、ご覧の通り既に姿を現し、9月には竣工の予
定となっております。
満蒙開拓の記憶は時間の彼方へと過ぎ去りつつありますが、その歴史の中から平和の教
訓を学び取っていくための努力は今もなお、そしてこれからもこの記念館を核としつつ続
いていきます。私たちは今、明日の平和を築くための新たな活動の掘り起こしをしている、
これもまた一つの「開拓」であると思います。多くの犠牲を出した「満蒙開拓」と言う歴
史は二度と繰り返してはいけない歴史ですが、しかし、その中から学び、平和を切り開い
ていく「平和の開拓」へのチャレンジへの思いは、当時の開拓者の皆さんの飽くなきチャ
レンジ精神を見習ってまいりたいものと思います。
最後に今一度、旧満州に関わる多くの犠牲者の皆さんへの鎮魂の思いを新たにし、明日
の「平和の開拓」に励んでいくことをお誓い申し上げ、記念館館長としての慰霊の言葉と
させて頂きます。本日はご参集、誠にありがとうございました。
2019年(令和元年)8月11日
満蒙開拓平和記念館
館長 寺沢秀文