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広島で 古谷巌シベリア残影展

当館でも2020年に展示させていただいた古谷巌さん(広島県三原市在住)の個展が広島県三原市のギャラリーで開催中です。ぜひお出掛けください。

 

会期 2022年8月14日(日)~9月6日(火)のうち、日・月・火曜日

時間 13:00~18:00

入場 無料

会場 みはらアーカイブスギャラリー〒723-0052 広島県三原市5丁目2-15)

    🅿2台

主催 みはらアーカイブス  問合 090-1330-2488(友宗さん)

シベリア残影展に想う

 

古谷 巌    


私のカーキ色の青春、一軍国少年の体験談にひととき耳を傾けてください。

 

私は激動の昭和の年号と共に歩んで来、もの心つく頃には満州事変、上海事変、そして十五年戦争への発端となった日支事変と戦時色一色のなか小学校時代を過ごしました。

私達の年代(昭和8年 /1933 )から一年生の国語読本は、昭和の黎明を告げるかの如くカラー刷りに一新され、表紙をめくれば満開の桜の花が咲き、次のページには、「 ススメ、ススメ、ヘイタイススメ 」 と鉄砲を担いだ兵隊さんの絵がありました。皇統連綿、神州不滅などと教わり、 「 国難には 、 かの元寇の再来で神風が吹く 」 とも教えられ、それを固く信じておりました。 高等小学校卒業時には、あの 難しい 軍人勅諭を暗記、暗唱できるほどの徹底した軍国主義教育を受け、小さい胸にも「お国の為に」と 言う気概が育まれた少年でありました。当時国策として満蒙開拓青少年義勇軍の募集があ り、 いち早く応募し、 15 歳にして大陸に渡りました。そして私の カーキ色の青春は始まりました。

その内、信じていた神風も吹くことなく未曽有の敗戦、満州国は崩壊、 全満の開拓団員、義勇軍は棄民となりました。かくして少年の夢はことごとく破れ、果ては屈辱の捕虜と言う身にさらされ、酷寒のシベリアに抑留され、飢餓と酷使に耐え き れず 数万人の尊い命が失われました。

 

この体験を私なりに構成して 絵に表現してみました。絵といっても、構成も色彩もわきまえぬままで、無謀というほかありませんが、それには強い精神的な支えがありました。

10年前ある美術教師に 「 これらを生涯のテーマとするのも一つの選択肢だ 」 とアドバイスを受けました。それ以来その一言が脳裏から離れず、折を見ては描き続けたものです。

自分自身「見、聞き」肌で感じたものを、そのまま表現したままで、同情を求めるとか、被害意識を主張するものではありません。戦争には、勝者も敗者もなく、また加害者にもなり、被害者にもなるのが戦争です。その実態を目のあたりにしてきました。

 

本展をみていただき、 平和の尊さを再認識するきっかけとなれば幸いと思います。

 

2022年 (令和4年 8月) シベリア残影展に想う