開拓三代記
阪本牙城*著 発行:満州事情案内所 1940(昭和15)年12月15日、サイズ 20×15.2、68頁
満州開拓政策基本要綱をイラスト入りで説明した本
1939年日本満州両政府は「満州開拓政策基本要綱」を制定・発表しました。開拓政策を「日満両国の一体的重要国策」に位置付け、「東亜新秩序建設の為の道義的新大陸政策の拠点を培養確立」することが目指されました。具体的には、開拓民の種別を「日本人」「朝鮮人」「原住民」と区分けする、移民用地は「未利用地主義」とする、日満両国の開拓事業における仕事の分担を明確化するなどです。ただ、その内容はとても難しく、一般の人々がわかりやすいようにと絵解きを思い立ったと作者は序文を寄せています。
この本は、
1.日本建国~満州事変の歴史
2.満州建国~現在までの開拓事業と要綱の解説
3東亜新秩序と道義世界の建設に向けて
という3篇から成り、難解な歴史や言葉をイラスト付きで説明しています。
民族相和し、全世界が一つの家となり、平和に幸福に暮らそうという精神=「八紘一宇」の大理念を実現するものとして満蒙開拓が位置付けられました。ゆくゆくは東亜対アメリカとの世界決戦が来ると見こし、全世界全人類の平和のために必ず勝たねばならない。東亜共栄圏の指導的立場にある日本が、白人支配と搾取からアジアの民を解放する。その実力を見せつけるのが満州開拓民なのだと謳いあげています。
*1895年~1973年。本名阪本雅城(さかもと まさき)。東京都あきる野市生まれの漫画家・水墨画家。代表作に「タンク・タンクロー」「ジャンケンポンチャン」など。1939年満州国開拓総局の広報担当として渡満、少年たちの慰問・激励に各地の義勇隊訓練所を訪ね歩いた。朝鮮半島で敗戦を迎え、1946年引揚げ。